冬、予備校が終わって家に帰ると、学校集会での表彰常連者が玄関から出るところだった。そして彼は何度か顔を合わせている者同士かのように話しかけて来た。

「あ、どうもー、お邪魔しました。」

顔を覚えているだけで名前はさっぱり忘れていた。初対面もいいとこだ。

「あー、はあ・・・。」と気のない返事をすると二階から妹が降りてきて彼に忘れ物を渡した。少し会話をした後彼は出て行き、妹はその姿を見送った。

「彼氏?」

そう聞くと妹は首を横に振った。

「誰?」

「斎木よ。斎木将宗。」

ああ、将軍か。すぐ彼のあだ名を思い出した。